羅生門 他 / Ворота Расемон и другие рассказы. Книга для чтения на японском языке. Рюноскэ Акутагава
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Читать онлайн книгу 羅生門 他 / Ворота Расемон и другие рассказы. Книга для чтения на японском языке - Рюноскэ Акутагава страница 9

СКАЧАТЬ style="font-size:15px;">      しかし、五位が夢想してゐた、「芋粥に飽かむ」事は、存外容易に事実となつて現れた。その始終を書かうと云ふのが、芋粥の話の目的なのである。

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      或年の正月二日、基経の第《だい》に、所謂《いはゆる》臨時の客があつた時の事である。(臨時の客は二宮《にぐう》の大饗《だいきやう》と同日に摂政関白家が、大臣以下の上達部《かんだちめ》を招いて催す饗宴で、大饗と別に変りがない。)五位も、外の侍たちにまじつて、その残肴《ざんかう》の相伴《しやうばん》をした。当時はまだ、取食《とりば》みの習慣がなくて、残肴は、その家の侍が一堂に集まつて、食ふ事になつてゐたからである。尤《もつと》も、大饗に等しいと云つても昔の事だから、品数の多い割りに碌な物はない、餅、伏菟《ふと》、蒸鮑《むしあはび》、干鳥《ほしどり》、宇治の氷魚《ひを》、近江《あふみ》の鮒《ふな》、鯛の楚割《すはやり》、鮭の内子《こごもり》、焼蛸《やきだこ》、大海老《おほえび》、大柑子《おほかうじ》、小柑子、橘、串柿などの類《たぐひ》である。唯、その中に、例の芋粥があつた。五位は毎年、この芋粥を楽しみにしてゐる。が、何時も人数が多いので、自分が飲めるのは、いくらもない。それが今年は、特に、少かつた。さうして気のせゐか、何時もより、余程味が好い。そこで、彼は飲んでしまつた後の椀をしげしげと眺めながら、うすい口髭についてゐる滴《しづく》を、掌で拭いて誰に云ふともなく、「何時になつたら、これに飽ける事かのう」と、かう云つた。

      「大夫殿は、芋粥に飽かれた事がないさうな。」

      五位の語《ことば》が完《をは》らない中に、誰かが、嘲笑《あざわら》つた。錆《さび》のある、鷹揚《おうやう》な、武人らしい声である。五位は、猫背の首を挙げて、臆病らしく、その人の方を見た。声の主は、その頃同じ基経の恪勤《かくごん》になつてゐた、民部卿時長の子藤原|利仁《としひと》である。肩幅の広い、身長《みのたけ》の群を抜いた逞《たくま》しい大男で、これは、ゆでぐりを噛みながら、黒酒《くろき》の杯《さかづき》を重ねてゐた。もう大分酔がまはつてゐるらしい。

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